オーストラリア・アイアンマンを終えて
「Who is Yoko?」
2001年4月12日

   奥田庸子


今年の1月に日本のトライアスロン連合からプロのライセンスを取った。オーストラリアではプロになるためには、メジャーなレースで先頭から8%の成績がなくてはライセンスが取れない。日本にははっきりとしたラインがないようだ。7月22日のジャパン・アイアンマンに出場を決めた時点で、今年ハワイは行かないと決めた。1年間に3つのアイアンマンはきつ過ぎると思ったからだ。そこでいっそのことプロになろう、運がよければ入賞できるのでは。その程度の気持ちでプロに転向し「インチキ・プロ」と呼ばれていた。
プロになってもまだ私は「アンダードッグ=チャレンジャー」である。1月から1つの練習も外すことなく確実に自分の体を作り上げていた。


緊張・リラックス・興奮や不安、いろいろな感情が入り混じって向かえた大会前日の夜。すべての練習が終わりあとはベストを尽くすだけ、ここまで怪我なども無くやってこれたことにホッとした気分だった。突然外でザーと激しい雨の音が・・・人生そんなに甘くない。


Photo/Delly Carr当日も小雨の降る中バイクのセッティングを済ませる。ハンドルバーには姉の写真が張ってある。ますますプロらしくない、あ!隣のプロ選手のバイクにも誰かの写真が張ってあるぞ。ジョアン・キングのバイクの後ろにはバナナの木のようにカーボ・ショッツがくっついていた。
スタートから数秒後には他のエイジグルーパーとの激しいバトルが始まった。行っても行ってもスムーズに進むことはなく、岸に上がった時には目の端が黒くなっていた。それでもアンダー1時間で泳げたことに気をよくした。バイクは1周目が時速36km、おっと速過ぎ?それでも命一杯ではなくて余裕を残して走っている。シマノのWH-7700 のウィールとパナソニックのチタンフレーム、セライタリアのレディース・トランザムのサドル、本当に私の体とお尻にあっているようできつい苦しいサイクリングではなかった。


いよいよこれからが勝負、この時点で9位。一人また一人と女子選手を捕まえていく。シドニーで普段一緒にトレーニングをしているバルモラル&ワリンガ・トイアスロンクラブの仲間、一緒にクイーンズランドへサイクリングツアーに行った友達、スイミングのコーチなど沿道にはたくさんの友達が声援を送ってくれている。その応援にスマイルを返せるだけの余裕を持って走っていた。
3位を走っていたジョアン・キングの背中を見たときは本当に信じられなかった。big photo作戦はない。彼女の足取りを見て自分が大丈夫いける確信し「Keep going Jo」一声かけて颯爽と抜いていった。靴下の中に石が入っていたし、おなかの調子が悪くなってきてトイレにいかなくてはいけないかなーなんて思いながら2位のベリンダ・グレンジャーを追いかけた。
シドニーオリンピックのボランティアを一緒にやった友達のリンを見たときは涙が出そうになった。その応援に後押しされるようにゴールを目指す。結局ジョアンは簡単には離れて、くれなくてラスト500m程の所でやっと3位を確信できた。その後は皆の声援に答えながら笑顔で走り続ける、でもそれは夢の中の出来事のようだった。フィニッシュラインを過ぎた時「まだ終わって欲しくない」そう思った。


表彰が行われたパーティーでは世界で戦っている選手が顔を揃える。ロリ・ボーデン(ハワイ2位)、ローラ・ダーク(カナダ2位)、ジョアン・キング(元世界チャンピオン)、ユータ・ミュークル(ハワイ15位)、スーザン・ピーター(マレーシア3位)、ジャン・ウォンクリン(1991オーストラリア1位)、ベリンダ・グレンジャー(昨年4位)などなど。その中で私は昨年始めてのオーストラリア・アイアンマン、結果は30位。
「Who is Yoko?」誰も私のことを知らないに等しい。ステージの上でロリに自分の名前を言われた時、また1歩彼女たちに近づいたような気がした。
オーストラリア・アイアンマンが終わり3位に入賞したということで自分の周りが変わってきたようだ。いいことも悪いことも含めそれが自分を成長させるステップとしていきたい。
「ボクハ、カゲムシャデイタイ」そう言うパブロだけれど彼は私のボーイフレンドそしてコーチである。彼の助けがなかったらここまでやってこれなかった。この結果は二人とたくさんの仲間の支えがあったから掴むことができたものである。

Thank you Pab & Everybody!
 
この場を借りてスポンサーのシマノとパナソニック、サポートしてくださっているジェロニモ・大塚さんにお礼を言いたいと思います。誇りを持って私の愛車「パナコ」に乗
っています。

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